子供の頃、風邪をひくと憂鬱だった。

子供の頃、風邪をひいたら割と憂鬱だった。

憂鬱になる理由は、風邪の対処法と、暇にたえられない事にある。

あの頃は、ひたすら汗をかく事が風邪の対処法だった。
少なくとも実家ではそうだった。
多分に漏れず風邪をひいた私は、家族から重い布団をこれでもかと重ねられ、
その状態でひたすら寝ていた。

布団が重い事はよく覚えている。
どれ程重いのかと言えば、ろくに身動きが取れない程だった。

今思えば、あまり良い対処法ではない。
熱は下がるのだろうが、何かいろいろとデメリットがありそうだ。
脱水症状とか。

重い布団はともかく、風邪をひくとかなり暇だった。
ある程度成長していれば、ラジオを聴いたり、本を軽く読んだり、
何かしら暇をつぶす方法はあるのだが、小さい子供の頃はそうはいかない。
基本、時間を潰す方法がないのだ。

あまりにも暇で、私は障子のマス目を使い、一人ブロック崩しもどきの遊びをしていた。
始める場所はどこでも良い。
ルールは一つ、斜めに進むことだ。
障子のマス目の端に来たら、同じ角度で跳ね返る。
それをひたすら、ぐるぐる繰り返す。

何が楽しかったのか、
風邪で朦朧とした頭でなければとてもじゃないがやってられない遊びだ。

一日が、酷くゆっくり過ぎていった様に記憶している。
朝、だんだんと障子が明るくなり、
夕方、障子がだんだんと暗くなる。
うつらうつらとしているうちに、しらず日は沈み、部屋は真っ暗になっていた。

楽しみと言えば、母親がむいてくれるリンゴや、桃の缶詰だろうか。

鼻が詰まった状態で、正直満足に味わえないのだが、
あの冷たく甘いリンゴの味は、今思い出しても素晴らしいものだったと思う。

繰り返すが、風邪にはあまりいい思い出はない。
それでも、あの頃食べたリンゴの味は今でも思い出す。

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