子供の頃、稲刈りが終わった後のチョットした楽しみがあった。
稲刈りが終わると、藁の粉末というか粉状になったものの塊が、
田んぼにあちらこちらにできるのだが、最後にはそれらを燃やして回る作業がある。
一応、補足しておくが、現在は規制がかかっており、
この様な形で火を付ける事は出来ないと思われる。
ともかく、その様な締めの作業があった、ハズ。
正直、記憶があやふやだ。
毎回、すべての田んぼの藁を燃やしていたのか、
それとも、一部の田んぼだけやってたのかは記憶があいまいになっている。
ただ、ぱっと思いつくのは夕方の記憶なので、時間帯としては、夕方。
その日の作業の終わりに燃やしていたのだろう。
夕方、薄暗くなり肌寒くなる頃、
燃えている藁に手を当てて温まるのは中々に嬉しいものだった。
もっとも、藁は割とすぐ燃え尽きるので幸せな時間は長くは続かない。
その分、火はつきやすいので、火種を次の塊に投げ込んでは新たな火を作り温まっていた。
火は、割と扱えた。
稲刈りが終わった田んぼは、藁が所々に落ちているのものの、
その面積の大部分はむき出しの土だった。
その為、火が燃え広がる心配をあまりせずに済んだのだ。
気を付けるのは、強風ぐらいなものだが、その様な日はそもそも火は付けなかった。
まわりの家族からは、定期的に火に関する注意を受けたと思うが、
それは、その通りだと思ったので、子供心に気を付けながら火を扱っていた。
藁に火を付けた際、温まるのと同時に、小さな楽しみがあった。
もみ殻に火が付くと、まるでポップコーンの様に弾けるのだ。
火傷しない様に、それを上手く摘み出し、ひょいと口に放り込む。
正直、味なんてないのだが、口の中に入れても暖かいそれは、
噛んでいるうちに、仄かな甘みがあったように思う。
まぁ、米だし、ご飯を嚙めば甘みを感じるようなものだったのだろう。
夕日が、地平線に沈む頃、薄暗い中藁の煙にいぶされながら、
ポップコーンもどきを摘まんでいたのは、
稲刈りの数少ない楽しみの一つだったと思う。
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